こづちです。
中小企業の企業価値(EV)に関して(*EVはenterprise valueの略)
A①_時価純資産+営業権 (≒純資産+営業利益の1~6倍)
A②_EV/EBITDA倍率
A③_DCF法ディスカウントキャッシュフロー(実際の中小企業M&Aの価格交渉の現場でDCFが議論になる事はほとんどない)
なぜなら、
❶DCFは事業計画(≒将来のキャッシュフローを予測)をどうするかによって、
❷また割引率をどうするかによって、その計算結果の企業価値が驚くほど変わってしまう為。つまり売り手と買い手が事業計画や割引率に関して合意に至る事が難しい。そもそも、中小企業の叩き上げの社長にDCFの概念が伝わりにくい。BS、PLで語ると伝わりやすい。
では、実際に中小企業のM&Aの交渉現場ではどのような企業価値の計算方法がよく使われるでしょうか?
それはA①_時価純資産+営業権という計算方法です《補足のⅠ~Ⅲのアプローチをミックスさせたもの》
(ア) まず、「時価純資産」とはすべての資産を時価評価し、総資産から総負債を引いたもの、これはⅠコストアプローチの考え方
(イ) 次に、「営業権」とは営業利益や経常利益の数年分として算出される、これは収益性が基準になっており、Ⅱインカムアプローチの考え方(例えば、過大な役員報酬や節税があればそれらを調整した上で過去3年の平均をとり、その数年分を営業権とする。実質営業利益、修正後営業利益、実質EBITDA、修正後EBITDAなどと呼ぶ)
(ウ) 最後に、「営業権」の計算における利益の『数年分』の部分、ここが何年分になるかは業種や会社特性、売上規模によって変わってくるので、これはⅢマーケットアプローチの考え方(飲食業界×2倍 一方でストック、急成長市場は×5~6倍)
《補足 企業評価の方法》
I. コストアプローチ (時価純資産を基準)
II. インカムアプローチ (将来の収益性を基準)
III. マーケットアプローチ (類似会社の事例を基準)
《例題:時価純資産1億円、実質営業利益3,000万円の会社の株式100%の企業価値EVは?つまり売却価格は?》
時価純資産+営業権(実質営業利益3年分)=1億円+3000万円×3=1.9億円
もうひとつよく使われる企業価値EVの算定方法にA②_EV/EBITDA倍率(マルチプル)があります。EVはenterprise valueの略で日本語では企業価値と訳されます。キャッシュフロー重視の手法で投資会社・ファンドが従来から用いてきた手法。
企業価値EV=株主価値―現預金+有利子負債⇒株主価値=企業価値EV+現預金―有利子負債
《例題:売却価格が数億円~数十億円規模の場合5~10倍のマルチプルとして、 EBITDA3億円、現預金2億円、有利子負債5億円の会社が6倍マルチプルで評価された場合の株主価値は?》
EV=株主価値-現預金+有利子負債 ⇒ 株主価値=EV+現預金-有利子負債
株主価値=3億円×6+2億円-5億円=15億円
出所:インテグループ株式会社藤井一郎代表 中小企業M&Aの真実 https://pefund.jp/
Have a nice day!